その四

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走って走って、裕貴が追いつかないような場所まで来たところでやっと息をつく。 ふう、まいてやったぞ。 落ち着いた私は、あたりを見回した。 私が来た場所はどうやらこの大学の食堂のようだ。 まだ午前中なのもあってか、人はまばらで、学生たちがめいめいに歓談したり、勉強したりしている。 私は近くにあった自動販売機でお茶を買って、空いている椅子に腰掛けた。 それにしても、おっきい大学だ。 食堂の広さだけで、私の大学の二倍はあるし。 ここに来るまでにもたくさん建物が並んでいた。 私の大学は単科大学だし、建物だって五つか六つある程度だ。 いろんな学部の人がいる大学も、楽しそう。 むくむくわいてきたこの大学への興味を、あわてて押しとどめる。 これじゃおじいちゃんと裕貴の思う壺だ。 まあでも、せっかく来たんだから何個か授業をのぞいてみたいよね。 そのためには… 「どっかに授業案内みたいなのないかな…」 「なくしたの??」 突然かけられた声に、私は驚いて顔をあげた。
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