その四

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目に入ったのは、とってもかわいい女の子。 小さくて華奢で、亜麻色の髪を腰辺りまでふわふわ延ばしているかんじが、まるでお人形さんみたい。 彼女はその大きな目をくりくりさせて、こちらを覗きこんでいた。 答えない私に、彼女は続けて話し掛ける。 「でも、この時期に授業選ぶのって遅いね~??」 ゆったりしたペースで首をかしげつつ言う彼女に、私は慌てて答えた。 「実は、私受験生で。ちょっと大学見学に来たんです」 嘘ついちゃった。 でも説明めんどくさいし。 私の言葉に、彼女はにっこり笑った。 「そおなんだー。じゃあ、なのはの二こ下だねえ」 「なのはさん??」 「うん、原崎なのはっていうのー。あなたは??」 なのはは言いながら、私の相向かいの席に座る。 それにしても、仕草がいちいちかわいい。 「私は礼芽。紺野礼芽です」 私の自己紹介に、なのははにこにこと笑った。 「かわいい名前だねー。あややって呼ぶね」 え………… ええー 私、どう考えても『あやや』なんてガラじゃないんですけど…。 何と答えていいかわからない私に、なのはは続けて言った。 「ね、なのはがあややを案内したげる。あややの希望学部はどこ??」 ちょ、ちょっと、 あややはやめてー。 …とは言えず、私はあえてこの苦行に耐えることにした。 「えっと…経営です…」 すると、なのはは驚いたように手をうつ。 「えーっ、なのは経営学部なんだよぉ!!これって運命かなあ」 たまたまだと思うけど… 心の中でつぶやく私の手を、立ち上がったなのはがひいた。 「じゃあ、さっそく行こう。もうすぐなのはの取ってる授業はじまるから~」 そうして、私はなのはのペースに逆らうこともできず、半ば強引に食堂から連れ出された。
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