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ひきずられるようになのはに連れてこられた場所は、三号館と表示された建物。
その中のひとつの教室に入りながら、なのはは言った。
「経営学部はだいたいこの建物で授業があるんだよぉ」
「へぇ…」
じゃあ、裕貴もこのどっかにいるのかな。
考えつつ、私はなのはのあとに続いて教室に足を踏み入れた。
「広いなぁ…」
思わずつぶやく。
やっぱり、私の大学とは全然規模が違う。
感心してきょろきょろする私のかたわら、なのははさっさと教室のうしろの方に腰を落ち着けた。
私はしばらく教室を見回していたが、いつの間にかなのはが席についたことに気付き、慌ててなのはの横に座る。
「あの、なのはさん??」
「んー??」
私はゆっくりした動作で鞄から教科書を取り出すなのはに訊ねた。
「これは何の授業なんですか??」
なのはは教科書をすべて取りだし、鞄を隣の席に置いたあとこちらを向いた。
「えーとね、たしか、理論の授業だったよ」
たしか、って……
しかも、あいまい。
なのはは呆れる私に構わず、眉をひそめて続けた。
「ほんとは、これ履修するはずじゃなかったんだよ。ユキちゃんに騙されちゃってぇ」
え……………
「ユキちゃん??」
おそるおそるたずねる私に、なのははにっこり笑って答えた。
「うん、なのはの好きなひと!!ちょーかっこいいんだよ。経営学部のアイドルなの」
十中八九裕貴のことだ……
なのはにまで、毒がまわっているとは……
頭を抱える私の肩を、なのははぽんぽんと叩く。
「ユキちゃんに手ださないでね??ユキちゃんはなのはのだから」
「はい…」
頼まれたってしないし。
「今日は授業かぶるの午後からなんだよ。つまんなぁい」
じゃあ、裕貴に見つかるのは午後か。
ちょうどいいかな。
ぶーぶーと文句をいうなのはの言葉を、適当に聞き流しているうちに授業が始まった。
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