その四

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授業はいたって普通。 この授業を受け持つ先生が、マイクを使い、やる気があるんだかないんだかよくわからない講義を展開している。 生徒を指すこともないし、まわってくることもないから、前の方に座っている生徒以外はみんな別の授業の勉強をしたり、寝たりしているようだ。 内容は…といえば。 完璧に途中参加だから、よくわかんないっちゃわかんないんだけど。 うーん、つまらなくもなければ面白くもない、ってかんじ。 やっぱり、自分の大学で勉強していることの方が楽しいかなと思う。 裕貴やおじいちゃんには悪いけど、わざわざ大学をかえてまで学びたいことじゃないなぁっていうのが、正直なとこ。 まあ、これひとつ受けただけじゃわからないことではあるけれど。 そんなわけで、私は授業開始三十分にして飽き、隣のなのはを盗み見る。 なのははこの授業にまったく興味がないらしく、頬杖をついて堂々と携帯をいじっていた。 そのまま私がじっと彼女を見ていると、彼女は視線に気づいた様子で顔をあげた。 「なぁにー??」 首をかしげるなのは。 「いや、ノートとらなくていいのかなぁと思って」 私の言葉に、なのはは再び携帯に視線を戻す。 「いんだよー、先ぱいにテストの過去問もらうもん。いつもは出てないしぃ」 出てないんだ…。 私があきれていると、彼女はメールでも送り終わったのだか、携帯をぱたんと閉じた。 「それよりなのは、もうこの授業飽きちゃった。抜けない??」 「えっ、途中なのに??」 驚く私に、なのはは当然のようにうなずく。 「もういいでしょ??今、なのはの友達にメール送ったからさ。出ようよ」 「でも…途中で抜けるなんてよくないと思います」 私が思ったとおりのことを言うと、なのははくすくす笑った。 「あややってばまじめなんだね~。いいよぉ、じゃあ今回だけとくべつ、授業終わるの待ってたげる」 終わるの待ってたげる、って、これ、なのはの履修してる授業なはずなんですけど…。 でもそれをいちいち言っていてもこの子にはキリがない、と判断した私は、黙って前を向いた。
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