その壱

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そのしきたりとは。 当主の座を継げるのは、直系男子のみ 、というもの。 ああ、なんて古くさいしきたり!! うちは天皇家かっつーの!!!! お母さんという一人娘しか持たなかったおじいちゃんは、早めにお母さんを結婚させて息子をつくらせたがった。 その期待に答えるように、お母さんは20歳で結婚を決意。 そこまではよかった。 しかし。 問題は、おじいちゃんに黙って勝手に嫁にいったこと。 つまり、名字を紺野に変えた。 お父さんは私が小さいときに死んでしまったけれど…お母さんは恩賀崎家には戻っていない。 はい、恩賀崎家断絶。 ってなわけで。 「おじいちゃんは怒り狂ってお母さんを勘当、だったよね??」 「まーねー」 お母さんは楽しげにあっけらかんと答えた。 「まさかまだ跡継ぎ捜してたとは思わなかったよ」 お母さんの言葉にがくりと肩を落とす。 「私はおじいちゃんにも激しく同情するよ…」 「なんでよー。窮屈なんだから、あの家。金もないくせに」 確かにそのとおりだけど。 こわいよ、お母さん。 私は再度ため息をつくと、きっ、と顔をあげた。
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