その四

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彼は細い目をさらに細めて笑う。 「抜け出しちゃわない??二人で」 「…はあ??」 あまりに唐突な文弘の言葉に、思わず声がもれた。 さっき来たばかりなのに。 それに、今さっき知り合った人と抜け出して何をするっての?? しかし、文弘はかまわず続ける。 「浩紀となのはを二人きりにさせてやろうって言ってるんだよ。浩紀のためにさ」 「私、そんな義理ないし」 それをしてなのはも喜ぶならまだしも。 なのはは裕貴が好きなのだから、別に浩紀と二人きりになっても嬉しくもなんともないだろう。 めんどくさいし。 私のその言葉に、文弘は明らかに不機嫌そうな表情になった。 「なんだよ、この俺が誘ってやってるのにさ」 …何様?? 呆れる私の手を、文弘はがしっとつかんで立ち上がった。 「どうした、文弘」 「悪い、俺達意気投合しちゃって。抜けるわー」 「えーなんでー」 なのはが不満げな声をだす。 「悪いって。じゃーな」 そして、驚きで抵抗も忘れる私を無理やり引っ張って外に出た。 クーラーのきいた店内から蒸し暑い外にでて、私はやっと我に返った。 「なにすんの、離してよ」 「やだ」 振り払おうとするも、浩紀は私の手を強く掴んでいて振り払えない。 「二人きりにしてあげたんだから、もういいでしょ」 すると、文弘はにやっと意地悪く笑ってこちらをのぞきこんできた。 「わかってるくせに」 「なにが」 私がにらむと、文弘は声をだして笑った。 「とぼけちゃって。そんなん口実に決まってるじゃん。ついてきたからには、俺に付き合ってくれるんだろ??」 「あんたが無理やり連れてきたんでしょっ」 あんまり自分勝手な文弘の言い草に、私は腹立たしい気持ちをこめて掴まれた手をぶんぶんと振った。 すると、彼はその掴んだ腕をぐいっとひいて、私のもう片方の腕も掴む。 私は驚き、後ずさろうとするが、文弘の掴む力が強くて動けなかった。 こわい―― 裕貴にセクハラされてるときは、全然平気だったのに。 私は恐怖を紛らわそうと、ぎゅっと目をつぶった。
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