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文弘の姿がみえなくなるのを見届けて、やっと裕貴の手が私の口から離れる。
息苦しさから開放され、私はおおきくひとつ息をついた。
裕貴はそんな私を横目で見つつ、口を開く。
「なんで俺からは逃げるくせに文弘とは一緒にいるわけ??文弘みたいなのがタイプ??」
悪意がこめられていることがはっきりわかるその言葉に、私は顔をあげた。
「私が嫌がってんの、わかってたんでしょ。なんでそんな意地悪なこと言うの」
「おまえが余計な手間かけさせるからだろ」
う…それは、たしかに。
ごもっともなその意見に私は再び視線を落とした。
「春秀さんに案内しろって言われたのにできてねーし。お前捜すのに二限まるまる使っちまったじゃねえか」
「え…授業さぼらせた??」
「授業は入れてないけど」
よかった、もともと空きコマか。
…ってよくないか。
なんか裕貴機嫌悪い。
いつになく不機嫌な裕貴に対し、私は口をとがらせて首をすくめる。
「だって…」
「だって、何だよ」
にらむ視線をがんがん感じつつ、私はしぶしぶ口を開いた。
「裕貴、モテすぎ。いたたまれないよ」
私の言葉に数秒停止したあと。
「…は??」
裕貴は間の抜けた声を、ひとつあげた。
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