その四

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文弘の姿がみえなくなるのを見届けて、やっと裕貴の手が私の口から離れる。 息苦しさから開放され、私はおおきくひとつ息をついた。 裕貴はそんな私を横目で見つつ、口を開く。 「なんで俺からは逃げるくせに文弘とは一緒にいるわけ??文弘みたいなのがタイプ??」 悪意がこめられていることがはっきりわかるその言葉に、私は顔をあげた。 「私が嫌がってんの、わかってたんでしょ。なんでそんな意地悪なこと言うの」 「おまえが余計な手間かけさせるからだろ」 う…それは、たしかに。 ごもっともなその意見に私は再び視線を落とした。 「春秀さんに案内しろって言われたのにできてねーし。お前捜すのに二限まるまる使っちまったじゃねえか」 「え…授業さぼらせた??」 「授業は入れてないけど」 よかった、もともと空きコマか。 …ってよくないか。 なんか裕貴機嫌悪い。 いつになく不機嫌な裕貴に対し、私は口をとがらせて首をすくめる。 「だって…」 「だって、何だよ」 にらむ視線をがんがん感じつつ、私はしぶしぶ口を開いた。 「裕貴、モテすぎ。いたたまれないよ」 私の言葉に数秒停止したあと。 「…は??」 裕貴は間の抜けた声を、ひとつあげた。
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