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そんな私たちの微妙な空気を、突如高い声が吹き飛ばす。
「ユキちゃーん!!こんなとこにいたぁ」
甘い声色とのんびりした喋り方に、もしやと思って顔をあげると、そこにいたのは案の定なのはだった。
なのはのうしろに浩紀もいる。
浩紀はなんだか不機嫌そうな表情をしていたが、裕貴の前に座る私を見て、あれ、と声をあげた。
「礼芽ちゃん??だよね??」
浩紀の言葉に、それまで裕貴しか目に入っていなかったなのはも私の方を見る。
「あー、ほんとだ、あややだ!!なんで??なんでユキちゃんといるの!?」
「おい、“ユキちゃん”はやめろって言ってんだろ」
うどんを食べ終えた裕貴が反論するも、なのはは私がなぜここにいるのかの方が気になるらしく、私から目をそらさない。
どうしよう。
下手なことを言えば、なのはを怒らせてしまいそうだ。
ていうか、私はすでになのはにひとつ嘘をついている。
裕貴が余計なことしゃべる前に、うまくごまかさなくちゃ。
私は口を開いた。
「えっと、実は私と裕貴、従兄妹で。受験のために今裕貴の家に来てるんです」
「は??いと――いてっ」
怪訝そうな顔をして言いかけた裕貴の足を、テーブルの下で踏みつける。
私たちの不審な行動はなのはにバレなかったようだが、それでも彼女は眉をひそませた。
「いとこぉー??」
「はい」
内心冷や汗をたらしつつ、笑顔を崩さない私になのはは叫んだ。
「従兄妹だからってユキちゃんの家に住んでるなんて、許せないっ!!従兄妹は結婚できるんだよ!?」
えー、そうなる!?!?
怒り心頭な様子のなのはを、浩紀が必死で押しとどめる。
裕貴は状況を理解したらしく、ざまぁみろとばかりにニヤニヤ笑って何のフォローもしてくれなかった。
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