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「やったぁ!!じゃあ、さっそくユキちゃんと二人きりにしてくれない??」
「喜んで」
言って、がたっと椅子から立ち上がった瞬間、裕貴に手をつかまれる。
びっくりして何か言ってやろうとしたが、私が声を発する前に裕貴がなのはに向かって言った。
「もうすぐ三限だろ。ご当主に礼芽を案内するように頼まれてるからだめだ」
「ええー。ユキちゃんいつも真面目すぎ!!」
「お前が不真面目なんだよ」
「うわーん、ユキちゃんのいじわる」
口調のわりに、裕貴と会話できて嬉しそうななのは。
ところで、この手、離してくれないかな…。
離せという意味をこめて腕を振ってみると、裕貴がこっちを見た。
「離さない。お前すぐどっか行くんだから」
どうやら、また思っていたことが伝わっていたようだ。
私は口をとがらせ反論する。
「いいじゃん、私がどこ行こうと」
「いちいち手間かけさせんじゃねえよ」
またしても、明らかに不機嫌そうな表情をする裕貴。
私は腕を離してもらうことをあきらめた。
なのはは黙って見ていたが、耐え切れなくなったように間に割り込んでくる。
「ねえ、ユキちゃん、じゃあ、三限終わったらどっか遊びに行こうよ」
「無理。終わったらすぐ帰ってくるように言われてんの」
しれっと言い、裕貴はうどんの入っていた皿と、私の食べたしょうが焼き定食のお皿を重ねて持って立ち上がった。
「さて。そういうわけだから、授業行くぞ」
「ちょ、引っ張んないで」
私が裕貴に連れられ、ずるずると食堂を出る後ろから、不満げな顔のなのはと、さっきから一言も発しない浩紀がついてきた。
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