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「こっちこそ、おおげさでごめんなさい」
私の言葉に、浩紀は悲しそうにこちらを見る。
「礼芽ちゃんが怒ったのは、俺のずるい気持ちがわかっちゃったからだろ??」
浩紀のずるい気持ち。
私はなんだか答えられなくて、黙ったままでいた。
浩紀はそんな私に小さな声で言う。
「裕貴、礼芽ちゃんと接するときなんかいつもと違う気がするんだ。ひょっとして、裕貴があんなモテるのに今まで彼女作らなかった理由は、礼芽ちゃんかな…って」
「それはないです。私たち、会ったのつい昨日ですもん」
え??と驚いた顔で見てくる浩紀に、私もなんだろうと見返す。
「いとこでしょ??会ったことなかったの??」
あ、しまった。
私は慌てて取り繕った。
「ええと、なんというか、遠くに住んでるから、会ったのは昨日がほんと久しぶりだったというか」
浩紀はふうん、とあいまいな相槌をうってきたが、これ以上弁解してもよけいあやしくなりそうで、私も黙ることにした。
浩紀は。
私が裕貴を好きになって、裕貴も私を好きになることを期待しているのだろう。
だって、そうすればなのはは失恋する。
浩紀の方を向いてくれる可能性だって、でてくる。
全然ずるいことじゃないと思うよ。
と私はあえて心の中で浩紀に言った。
私が浩紀でも、そう考えてしまうだろうから。
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