その伍

4/32
前へ
/425ページ
次へ
「た…助かった……」 いまだ震える体をおさえ、呟く私と、 「まあ…なんじゃ、明日からはもっと早く起きなさい」 同じく雛子のどす黒いオーラにあてられ、震えるおじいちゃん。 そして飄々と成り行きを眺めていた裕貴がそんな私たちを見て、ふっと笑った。 ****** 「ふー、ご馳走さま、雛子さん。おいしかった」 「当然ですわっ」 運ばれてきた朝御飯を全部平らげ、私は雛子さんに向かって言った。 すっかり機嫌の直った雛子さんは、手際よく私たちの使ったお皿を片付けている。 ほんと、料理が絡まなきゃ普通の美人さんなのに……。 私は昨日の夜と今朝のことを思いだし、ぶるっと震えた。 いかん、忘れよう。 そ、そーだ、浴衣のままだったし、着替えなきゃ。 そう思って黙って席を立つと、なぜか裕貴も一緒になって立ち上がった。
/425ページ

最初のコメントを投稿しよう!

277人が本棚に入れています
本棚に追加