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「…ちょっと、なんでついてくんの」
廊下を歩く私の後を追う裕貴に向かって、振り向かずに問う。
「んー??だって着替えるだろ??」
面白がってる声音で返ってくる返事。
「だから、何??」
「手伝ってあげようと思って」
………。
それを聞いた私は、黙って廊下をダッシュした。
へ、変態だ。
わかってたけど、
裕貴はド変態だっ!!!!
一緒にいるのは危険すぎる!!!!
長い廊下を居間に向かったときと同様全速力で走り、私は自分の部屋に転がり込んだ。
ピシャッと襖を閉め、ぜいぜいいう息を整える。
うー、なまったな……
このくらいのダッシュでこんな息が乱れるなんて…
私は大きく息を吐き出し、前をみた。
「遅かったね」
「…!!!!????」
がた、ガタタッ
私は驚きのあまり腰を抜かす。
「な、なんで!?!?」
「近道した」
私の部屋のなかには、すでに薄く笑う裕貴がいた。
近道、って!!!!
居間からこの部屋まで、確かに、いくつか角を曲がるけどっ!!!!
「俺が何年ここに住んでると思ってんの??」
言いつつ、裕貴は私に近づき、腰を抜かして動けない私をひょいっと抱き上げた。
「ちょ、変態っ!!!!何すんの!?」焦ってばたつくも、裕貴は私を抱き上げたまま。
「何してほしいの??」
にっこり笑って問う裕貴を私はこれでもかと睨み付けた。
「おろしてっ!!!!」
「やだ」
言いつつ、私の耳をかぷっと噛む。
ひ、ひいいいいっ!!!!
おか、おか、犯されるっ!!!!
半ば本気で叫ぼうとした私の耳に、裕貴の低くささやくような声が響いた。
「そろそろ…ご当主の本当の狙いを知ってもらおうかと思って」
え………????
意味深な言葉に、思わず私は暴れる腕をとめた。
おじいちゃんの、
本当の、狙い………????
見つめる私を見つめ返し、裕貴は妖艶に微笑む。
一瞬の静寂が、部屋を支配する。
……と、その時。
「お客様です、礼芽さま」
三美子さんの声が部屋の外からして、襖が開けられた。
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