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「なに」
「あんたは出てくの」
わかってるくせに、とぼけてその場を動かない裕貴。
仕方ないから私は裕貴のうしろにまわりこみ、背中をぐいぐい押す。
裕貴はしばらく動く気なさそうにしていたが、やがてこちらを振り向きにやっと笑った。
「礼芽ちゃん」
「なによ」
裕貴の呼び方に鳥肌をたて、眉をひそめる。
「かわいいね」
はぁっ!?!?
とっぴょーしもない裕貴の言葉に私が唖然としているうちに、裕貴はたぁちゃんを一瞥して部屋を出て行った。
残されたのは、気まずい空気に包まれる私とたぁちゃん。
ど、どうしよう。
なんか、意味わかんない空気になってる。
たぁちゃんが何も言わないので私は笑顔をつくろい、たぁちゃんの方を振り向いた。
「ど、どのくらいここにいるの??」
私の質問に、たぁちゃんははっとしたように私を見た。
まるで、今まで私がいるのを忘れていたかのような、そんな態度。
「あ、えっと、」
言って口ごもるたぁちゃんを、私は笑顔で促す。
たぁちゃんは、うつむき、しばらく黙ったあと、ばっと顔をあげて言った。
「できれば、あやがいる間ずっといたい」
「え、ええ!?!?」
今度はたぁちゃんの突拍子もない発言に、私は思わず大声をあげた。
そ、そりゃ、私だってできればたぁちゃんのそばにいたいけど。
でも、今私がここにいるのはうちの家族の問題を解決するため。
外部の人間を交えては、真剣に考えられないよ。
どうしよう…。
私は何て答えていいものやら迷いながら、たぁちゃんにたずねた。
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