その伍

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「なに」 「あんたは出てくの」 わかってるくせに、とぼけてその場を動かない裕貴。 仕方ないから私は裕貴のうしろにまわりこみ、背中をぐいぐい押す。 裕貴はしばらく動く気なさそうにしていたが、やがてこちらを振り向きにやっと笑った。 「礼芽ちゃん」 「なによ」 裕貴の呼び方に鳥肌をたて、眉をひそめる。 「かわいいね」 はぁっ!?!? とっぴょーしもない裕貴の言葉に私が唖然としているうちに、裕貴はたぁちゃんを一瞥して部屋を出て行った。 残されたのは、気まずい空気に包まれる私とたぁちゃん。 ど、どうしよう。 なんか、意味わかんない空気になってる。 たぁちゃんが何も言わないので私は笑顔をつくろい、たぁちゃんの方を振り向いた。 「ど、どのくらいここにいるの??」 私の質問に、たぁちゃんははっとしたように私を見た。 まるで、今まで私がいるのを忘れていたかのような、そんな態度。 「あ、えっと、」 言って口ごもるたぁちゃんを、私は笑顔で促す。 たぁちゃんは、うつむき、しばらく黙ったあと、ばっと顔をあげて言った。 「できれば、あやがいる間ずっといたい」 「え、ええ!?!?」 今度はたぁちゃんの突拍子もない発言に、私は思わず大声をあげた。 そ、そりゃ、私だってできればたぁちゃんのそばにいたいけど。 でも、今私がここにいるのはうちの家族の問題を解決するため。 外部の人間を交えては、真剣に考えられないよ。 どうしよう…。 私は何て答えていいものやら迷いながら、たぁちゃんにたずねた。
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