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「…おじいちゃーん??」
まだ間取りをきちんと覚えきっていない恩賀崎家のなかを歩き回り、やっとおじいちゃんの部屋らしき場所に出た私は、おそるおそる襖を開けた。
「どうした」
よかった、おじいちゃんの部屋だった。
私はほっとして中に足を踏み入れ、中でなにやら書類を読んでいたおじいちゃんの前にひざをついた。
「なんじゃお前、まだ着替えとらんのか」
あ、忘れてた。
けしからん、といわんばかりのおじいちゃんの目線をかわし、私は話をそらす。
「それより、お願いがあるんだけど」
「お願いじゃと??」
いぶかしげに眉をひそめるおじいちゃんに向かって、私はばっと頭を下げた。
「もう一人、ここにおいてほしいのっ!!」
「はぁ??」
私は顔をあげて、おじいちゃんの方をみた。
「もちろん、私が帰るときに一緒に帰る。だから、お願い」
「何者じゃ」
静かな声音でたずねてくるおじいちゃん。
私はごくっとつばを飲み込み、答えた。
「彼氏」
「………」
黙り込むおじいちゃんに、私ははらはらとしておじいちゃんを見つめる。
だめって言われたらなんて言って説得しよう…。
長い沈黙のあと、やがておじいちゃんは口を開いた。
「許可しよう」
「え」
ええっ!!!!
「やったぁ!!!!」
思わず飛び上がる私をみて、おじいちゃんはにやりと笑う。
なんだろ、その笑顔。
若干疑問に思うも、ここで変なこと言って撤回されたらかなわない。
「ありがとう、おじいちゃん!!」
笑顔になる私をみて、おじいちゃんは笑ったまま再び書類に目をむけた。
「部屋は客間を使ってもらえ。ご飯はわしや裕貴と一緒にとるんじゃぞ」
「はぁい!!!!」
なんだ、おじいちゃん、物わかりいいじゃんっ
私はすっかりご機嫌でおじいちゃんの部屋を出て、来た道を戻った。
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