その伍

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よかったー。 たぁちゃん様子おかしかったけど、これできっと機嫌戻ってくれるはず。 ほっとしながら自分の部屋につながる角を曲がると、裕貴の部屋の前に裕貴と制服を着た海大くんがいた。 「あ、おはよー、礼芽」 八重歯をみせて笑う海大くんに返事を返す。 「おはよう。もう9時になるけど、これから学校??」 「うん、寝坊したから!!」 あっけらかんと言う海大くんに若干呆れる。 「じゃあ早く行きなよ」 「裕貴にいと一緒に行くんだもん」 海大くんが口をとがらせてそう言うので、私は裕貴の方を見た。 「裕貴もこれから大学行くの??」 「ああ」 返事がなんだか淡白だ。 ちょっと気になるけど、あえて突っ込まずに私は二人に笑顔を向けた。 「じゃ、いってらっしゃい」 「紹介、しねーの??」 無表情でそう聞いてくる裕貴に、私はびくっとして彼を見た。 「紹介、って…??」 「おまえの彼氏だよ。名前も聞いてないんだけど」 あ、忘れてた…。 これから一緒に暮らすことになるんだもの、紹介もしないのは失礼だった。 「礼芽の彼氏ー??」 好奇心をみせて聞いてくる海大くんに、私はうなずく。 「そう、彼も私が帰るまで一緒に暮らすことになったの」 「えーっ!!」 驚く海大くんとは裏腹に、裕貴は早くしろと言わんばかりの目線をよこす。 なんでそんな不機嫌なの。 なんとなく不満に思いながらも、たぁちゃんを呼ぶべく私は自分の部屋の襖をあけた。
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