その伍

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「言いたくないんなら、いいよ。私着替えたいから、少し出ててもらってもいい??」 そう、どたばたしてて時間がなかったから、私はまだ寝巻きとして着てる浴衣のままだった。 ごにょごにょ言ってたたぁちゃんは泣きそうな顔でこっちを見る。 やばい、またやっちゃった。 言葉が足りなかったかも。 私は慌てて付け足した。 「たいして気にしてないから。 着替えてもいい??どこか行こうよ」 私の補足に、やっと安心したようにたぁちゃんは笑う。 「そっか、うん、わかった!!廊下にいるね」 「うん、すぐ着替える」 どうせ恩賀崎家にいるのは一晩二晩程度だろうと思っていたから、私は着替えをほとんど持ってきていない。 つまり、かなりのヘビーローテーションで着まわししなければならない。 服、買いに行こうかな…。 私はそんなことを考えながら、たぁちゃんが部屋を出たのを確認すると、鞄に入っている服を取り出して身に着けた。 着替えながら、思う。 そういえば、裕貴と話しているときは「あ、自分言葉が足りなかった」って思うこと、ない気がする。 なぜか、裕貴は私が口にしないで思っているだけのことも、察してくれてるみたいだから。 こうしてみると、貴重な人だ。 そんな風に裕貴の存在価値(上から目線)を心の中で確認しているうちに、着替えは終わっていた。
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