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優雅な動作で縁側に上がった三美子さんは、私たちの先に立ってすたすたと屋敷内を歩いていく。
私も、はやく屋敷の間取りを覚えなきゃな…。
やっぱり最初の日に、裕貴に案内してもらっとくんだった。
私がそんなことを考えているうちに、いつの間にか客間にたどり着いていたらしい。
三美子さんは私の手からたぁちゃんの荷物を取り、すっと襖を開けた。
「どうぞ、こちらです」
「うわあ、広い部屋」
うれしそうに部屋に入るたぁちゃんを見て、私はほっとした。
よかった、気に入ってくれて。
これで私と一緒の部屋がいい、なんて駄々はもうこねないだろう。
私も三美子さんとたぁちゃんのあとに続き、客間に入る。
三美子さんは、電気のスイッチだとか、布団の場所をたぁちゃんに教えていた。
「ここにある布団を使ってください。ご希望であれば、寝る前の時刻に毎晩布団をひいておきますが、いかがなさいますか??」
うわあ、仲居さんっぽい。
最初に会ったとき以来お目にかかっていない三美子さんの丁寧な言葉遣いに聞きほれていると、たぁちゃんは首を横に振って言った。
「いや、自分でできるんで、大丈夫です」
たぁちゃんの返事に、三美子さんはにこっと笑う。
「わかりました。それでは、何かあれば何なりとお申し付けください」
三美子さんは言って一礼したあと、私を一瞥し、部屋を出て行った。
三美子さんが出て行ってからしばらくして、たぁちゃんが興奮したように私に言う。
「ずいぶん上品な人を雇ってるんだな。すごいよ、あやの実家」
いや、あなた、さっき三美子さんが私に言った暴言聞いてなかったんですか??
あきれて思うも口には出さず、私はうなずいた。
そんな私をちらりと見て、たぁちゃんは言う。
「ていうか、あや、この屋敷の間取り把握してないの??」
うっ
痛いとこつくなぁ。
私は言い訳がましく答える。
「だって、おととい来たばっかりだもん」
「じゃあさ、俺と探検しようよ!!」
たぁちゃんは楽しげにこんな提案をしてきた。
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