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「じゃ、次は…とりあえず、このまま廊下をすすんでみようか」
気を取り直して言うたぁちゃんに同意し、私たちは先に進む。
そしてしばらく進んだところで、部屋から出てくる明海さんとはちあわせた。
「あっ、明海さん」
私たちに気づいていなかった明海さんは、びっくりしたように振り返った。
「驚かせちゃってごめんなさい…ここ、明海さんのお部屋ですか??」
「ええ、そうです。隣が海大の部屋」
明海さんは声をかけたのが私であることを確認して平静になったが、私は逆に明海さんのその言葉でさっきのことを思い出し、凍りついた。
私が何を思ってるか伝わったのだろう。
明海さんはころころ笑って言った。
「何を怖がっていらっしゃるんですか。礼芽さまを叱ったわけじゃないんですから」
そりゃ、そーでしょうけども!!
傍から見てる分にも十分怖かったんだもの!!
私と明海さんのやりとりにたぁちゃんは首をかしげつつ、間に入ってくる。
「あの、俺、あやが帰るまでご厄介になる、田辺太一っていいます!!よろしくお願いします」
明海さんはたぁちゃんの方をみて笑顔を見せた。
「玉城明海です。ご当主の補佐役のようなものをやっております。どうぞよろしく」
今朝のことを寸分も感じさせない笑顔に、私もたぁちゃんもほうっとなった。
ほんと、海大くんが絡まなければ普通なのに…。
明海さんはそんな私たちを見て目を細め、それじゃあ、と一礼して去っていった。
「…美人さんばっかりだな」
たぁちゃんのつぶやきに、私は同意する。
「ほんと、不公平だよね」
しかし、私の言葉にたぁちゃんははっとなったように抱きついてきた。
「もちろん、一番かわいいのはあやだよ!!」
何そのフォローっ
無理やりすぎる!!
それでもこんなのが十分嬉しい私は、恥ずかしさから真っ赤になって抱きついてきたたぁちゃんをぐいぐい押しのけた。
「は、離れてっ」
「ほんとだよ!?あやが一番なんだよ!?」
「わかったからっ!!」
ぐいぐい、と押し問答をしていると。
「邪魔」
いつの間に帰ってきていたのだか、裕貴が私たちの後ろに立っていた。
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