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白く、白く、閉ざされたように立体感の感じられない部屋。その天井面すべてが発光し、白い光で埋め尽くされたような部屋。その中心には一つのベッドと脇に座る一人の青年、そして一定の間隔を打ちながら電子音を響かせるやはり白い小型の機械があった。
ベッドを見つめる青年の視線の先には、瞳を閉ざした少女の静かな、しかし壊れそうなほどに儚い吐息。
医師が言うには身体にはどこにも異常はないという。しかし不思議な程に衰弱していくと言うのである。
だが、青年は知っているのだった。しかしそれは、にわかに信じがたいものであり、事実だとしても今の自らには覆すことのできない事であり、それは青年に絶望をもたらすには充分なものであった。
青年は思う。
死の淵にある少女を生かすためならば自分はどんな事でもしようと。神にでも悪魔にでも魂を売り渡そうと。
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