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それは10年前まで遡る。
私がまだ6歳だった頃、紅家の敷地はかなり広かった。
私はその家に生まれ、母、葉音(ハオト)と2人で暮らしていた。
「夕姫(ユウヒ)。外も寒くなりました。風邪を引きますよ」
「お母さん。今ね、剛鬼(ゴウキ)が柿を取ってくれたのよ。お母さんの分もあるの」
「そぅ。ありがとう、夕姫。でも、むやみに剛鬼や玩鬼を遣ってはいけません。彼らはあなたを守る鬼なのだから………」
ゴホッ ゴホッ
「お母さん!!」
『葉音様!!』
「大丈夫。あなたが16になるまでは………。よくお聞きなさい、夕姫。我が紅家には鬼を斬ることの出来る神器名剣、『鬼切丸』という日本刀があるの。その為、人々からは鬼憑きと呼ばれ、恐れられていた」
「………でも、今は誰も怖がってないわ。みんな優しいもの」
「そうね。今の人達はみんな優しいわ。でも、私達はヒトにあってヒトにあらず。この世に蔓延る全ての鬼を斬り殺さなければ、人間(ヒト)としての幸せは来ない…………。それでも私は母としてあなたに幸せを与えたいの。人間として生きていけるように………」
そう言うと母は泣きながら私を抱き締めた。
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