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母の待つ部屋へ行くと、母は神妙な顔つきで手にしていた日本刀を差し出した。
「…………夕姫………。母はもうこれを持つ資格はありません。やはり運命には逆らうことが出来なかった………」
涙を浮かべる母は、私の顔を見ずに語り始める。
「私はこの10年、生まれてくる鬼を斬り続けました。そして最後の鬼を斬る際、私は自分の身体の異変に気がついたのです」
「身体の異変?」
「鬼切丸を手放すのは、自らが鬼へとなり変わるとき………。それが鬼切丸を渡す継承の儀式………」
「………つまり、お母さんを斬れと?」
「えぇ。私も先代を………自分の父を殺しました。鬼と成り果てた父を………。本当はこんな事させたくはなかった……。あなただけはこの呪縛から守りたかった………。だけど、それを願えば願うほど、私は鬼へと変わってしまう!鬼は人の闇に巣喰う魔物………私は鬼切丸の使い人としながら闇に捕まってしまった」
「……………」
「だから、手遅れにならないうちに……私が鬼へと変わった瞬間、ためらわずに斬りなさい!!」
いつになく凛として話す母は気高く、そして美しかった。
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