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「誰だ。」
蔵人の叫びに反応はない。
再び闇の静寂が全てを包む。
「誰なんだ。俺を助けてくれ。」
訳もわからなくなって蔵人は叫び続けた。
どれ位、そうしていたのだろう?時間の感覚すら薄れていく。
「おい、しっかりしろ!」
今度の声は、やけにはっきり聞こえる気がした。
誰かが体をゆすっている感じさえするのだ。
すると一条の光が闇の中に差し込まれた。声は光の先の方から聞こえる。
蔵人は泳ぐ様に、声のする方へ、光へともがいた。
進んでいるのか、蔵人にはわからなかった。
だがその光にすがるしかなかったのだ。
「おい、しっかりしろ!」
再び声がする。
もう蔵人は光の中に居た。
視界がゆっくりと上下に割れた。
「う・・・ん。」
蔵人の目に入ってきたものは、太陽の眩しさと丸メガネの青年だった。
青年は目を覚ました蔵人をみて、表情を和らげた。
「起きろよ」
青年の口から発せられる言葉に、蔵人は安堵感を覚えた。
(俺を呼んでたのはコイツか・・・。)
闇の中から引き上げてくれた声が、目の前の青年であることに蔵人は感謝した。
「礼奈は!?」
蔵人は体を起こし、辺りを見渡した。
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