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目の前の青年の他に、数人の男女が寝そべっている。その中の一人に蔵人の目が止まった。
「礼奈っ!!」
急いで駆け寄り、蔵人は礼奈の肩を抱いて揺すり続けた。
「しっかりしろ!!目を覚ませ!!」
礼奈は腕の中で軽く身じろぎをして、色っぽいとも取れる吐息をもらした。
ゆっくりと目を開け、段々とハッキリする視界に蔵人の顔がうつる。
いつもより焦ったような、悲しいような顔をした恋人を見つめ礼奈は安堵した。
蔵人だ。自分の傍に蔵人がいる。一人じゃないんだ。
「蔵人・・・。」
礼奈は横で見ている舞斗に気付かず蔵人に抱きついた。
きつく、きつく、まるですがるかの様に強く抱きしめる。その細い腕は確かに震えていた。
闇の中に一人だった恐怖を打ち払うかの様に、お互いがお互いを求めキスを繰り返す。
「起きた途端にこれかよ・・・。」
舞斗は半ば呆れた様に呟き、見ていられないとばかりに背を向けた。
「礼奈・・・。」
「蔵人・・・。」
背中に熱い声を聞きながら、舞斗は海を見つめた。
雲ひとつない空を写した海は美しかった。
(何処なんだ、ここは・・・。)
舞斗は大きなため息を吐いた。
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