記憶

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風ひとつ無い、光り輝く海原に大型の船が浮かんでいた。 豪華客船とまではいかないが、それなりの客室や設備の整った船だ。 船は今まで進んできた証を残すかの様にゆっくりと、だが確実に海を掻き分けて行く。 暖かい春の陽射しが甲板で寝ている舞斗(マイト)を目覚めへと誘った。 容赦のない光のシャワーが綺麗に磨かれた船体に反射し、舞斗の視界は白く塗り潰された。 『う・・・ん?』 まだ眠そうな目を擦りながら茶髪で長髪、丸メガネをかけた痩せすぎな青年は、自分の置かれている状況に息を飲んだ。 『なっ!?』 完全に回復した視界に写ったものを見て、眠気など一気に吹き飛んだ。 何故船の上に居るのか、自分の回りの倒れてる人達は? 眼下に広がるのは、見渡す限りの海と、舞斗を中心に倒れている人達、数を数えると5人、その全員がスースーと安らかな寝息を立てている。 『どうやら全員生きてるみたいだな。』 自分をおちつかせる為なのか、独り言の様に呟いた。
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