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咄嗟に、凛子の手を掴み、飛び退いた。
先が見えなかろうと関係なかった。
むしろ、後方から迫る経験した事の無い変化、恐怖と立ち向かう術を持っていなかった。
「い、痛てぇ……なんだっての!もうわけわかんねぇ」
一粋は、空を見上げるような形で地面に寝そべった。
「なぁ」
「おい、大丈夫かよ」
「多分」
さっきまで、光が沈黙を続けていた世界が明るくなっている事に2人は気付く。
「白井一粋…。」
ポツリと呟いた。
「え?」
「俺の名前、白井一粋。まだ言ってなかったもんで」
「あ、そうだったね」
凛子はすっかり忘れていたようだった。
「ねぇ、どうすんのよ?」
「何が?」
「何がってこの状態!」
暫らく、一粋は黙り込み
「とりあえず、せーので起き上がってみっか?」
そういう事じゃないんだけど……と
不安を沢山抱えた表情の凛子だったが、渋々体を起こす。
目の前に広がる景色は、自分達の通勤経路には、決してないものだった。
いや、日本にさえ、このような所があるのか確かではない。
どれほど続いているのか解らない。
荒れ果てた大地。
「なんだよこれ……なぁ……なぁってば」
凛子が冷静に、いや、冷酷にともとれる返事をする。
「うーん、荒野っていうんじゃないの?」
(この女…)
「そっか、荒野か…じゃねぇよ!そうじゃなくてだな!」
一粋はお前おかしいぞと言わんばかりに凛子を指差した。
すると、自分の手の甲に妙な幾何学模様が浮かび上がってる事に気付く。
「なんだこれ?」
凛子も顔を覗かせる。
「あーもう、本当に本当に本当に本当に本当に本当にわけわかんねぇっ」
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