虚構の事実

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荒れ果てた地を2人並んで歩く姿があった。 あれだけ、一粋の頭がショート寸前だったのだが、今は、なんとか回路が繋がっているようだ。 そうなれたのは、凛子のおかげだったのかもしれない。 「わからない物はわからないままでいいんじゃないの?」 元々、楽観的な一粋に多くの言葉はいらなかった。 「怖くねぇの?」 2人の言葉以外に聞こえるのは、風の音それぐらいなもので、やり取りにかなりの時間がかかっているような錯覚に陥る。 「怖いよ」 風に乱される髪と颯爽と一粋の前を歩く凛子の後ろ姿が強がっているようにも見えた。 「そっか、そうだよな」 そう言った拳は強く結ばれて手の甲の模様はまた一層強く光を放っていた。 「なんであの電車に乗ってたの?」 「あ、あぁ、仕事 そういうあんたは?」 「私も仕事 看護師なの」 凛子は、後ろから聞こえるはずの足音とは違う、クスクスという音に振り返った。 「ちょっと、なんで笑うのよ」 不機嫌そうな凛子をよそに、笑いながら説明し始める。 「……いやっ、こんなっ愛想の悪い白衣の天使もっ…いるんだなっって」 一粋の顔面と地面が激しく衝突したのは、言うまでもない。 そんな感じでじゃれ合いながら、時にこれからの事を話したりして、一粋の提案を凛子が冷静に受け流していた。 その度に落ち込み足取りが重くなったりしながらも、果てしなく広がる荒野を着実に歩み進める2人だった。 不安を抱えたまま進むその姿は、まるで何かに導かれるように。
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