新春

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だが、そんな静寂を切り裂く人間が現れた。 誰だと思う? 「翼さん、いらっしゃいますのー?」 水月です。 「水月、どうした?」 「あ、翼さん、せっかく家も隣なので一緒に帰りません?」 「あー、今沙雨那待ってるから少し時間掛かるぞ」 「構いませんわ」 「そうか、じゃあ一緒に待ってくれるか?」 「ええ。 翼さんとこうするの久しぶりで、何だか懐かしいですわ」 「はは、そうだな。 まあ適当にその辺に座ってのんびりしようか」 「はい、では翼さんのお隣に」 そう水月が言うと俺の隣に椅子を寄せて座ってきた。 「水月、何か随分積極的になったな」 「たまにはこういうのも悪くないと思いまして。 別に幼馴染みなのですから恥ずかしくないですわよね?」 「ああ、まあな」 「ふふ……翼さん、何故私は翼さんに会いに来たか分かります?」 いや知らんがな。 「分からないな、何故だ?」 「雰囲気が私のお兄様そっくりなのですわ。 一緒にいると心が安らぐというか……って、こんな台詞、私には似合いませんわね」 くすくす笑いながらそう俺に話す水月。 「まさかまた揶揄ってるんじゃないだろうな?」 「いいえ、本当に安らぎますの。 不思議ですわね……。 やっぱり性格が変わったのかしら……」 うーん……何だかそう言われると嬉しいな。 「はは、もっと水月は強気な方が似合うぞ」 「ふふ、今日クラスの人達に言われましたわ。 「随分大人しくなったな」って……」 昔はもっと五月蝿い奴だったしな。 「あっ、翼さん、今「昔はもっと五月蝿い奴だった」とか思いましたわね?」 「なんだお前、エスパーにでもなったか」 「顔に書いてありますわ。 確かに昔はもっと五月蝿い人でしたわ、私」 「人見下してなかったか?」 「あ……あら、そうでしたの? うーん……無自覚でしたわ……」 「ゴメン、嘘」 「え……も、もう! 翼さん、人を揶揄うのは止めて下さいます!?」 「お前が言える立場じゃないだろう」 「……う、五月蝿いですわっ!」 水月を揶揄うと楽しいな。 さて……沙雨那はまだかな。
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