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この世に生まれてだいたい一年半。
俺は、戦場に向かっていた。
普通の人間や魔物だったら異常なのだろうが、俺や俺の同類なら百人中百人が「普通だ」と答えるだろう。
「魔法生物『スライム』」
俺はこう呼ばれる。
魔法生物とは、早い話が人造人間、魔造魔物だ。
物質に、箱に魔力を込めて思考回路を積んだ物、通称『核』を入れた物だ。
魔法生物にはもちろん愛玩用の物もあるが、最近魔法生物の技術が確立してからは兵士として造られる事が多い。
その中で魔物が初めて造った軍用の魔法生物が俺達スライムだ。
スライムは、餅みたいに良く伸びる『ゲル』と呼ばれる半透明の物に最低限の思考回路を積んだだけの『核』を入れただけの物だ。
魔法―特に火系―に弱いという弱点はあるものの、物理攻撃にはほぼ最強(魔法生物の中でも最小レベルの核なので、壊されにくい)なので、安く造れる事もあいまって魔物が造る魔法生物の中で最も数が多い。
「止まれ!」
指揮官が言うと、俺も含めたスライムが一斉に止まる。
いつの間にか、森の中に居た。
この部隊はスライム千匹とスライム百匹をまとめる「ゴブリン」十匹、ゴブリン達をまとめる部隊長の「オーガ」で構成されている。
「今日はこの地点で夜営する。」
オーガはそう言うと、ゴブリン達にテントを張らせてテントに入っていった。
スライムは雑用が出来る様にはなっていない為、普通の部隊なら楽なはずの一番下の士官が損をする。
ゴブリン達は寝袋に入り、愚痴を言いはじめる。
スライム達は、沈黙したまま地面の上に居る。
―当たり前だ。
スライムは、喋る事はおろか、思考すら出来ない『はず』なのだから。
しかし、『スライム』であるはずの『俺』は思考出来、魔力を使って『喋る』、つまり思考を伝える事が出来る。
しかも『知識』まで備わっている。
考えられる可能性としては、『核』の魔力に魔物や人間の霊が引き寄せられて、取り付いた。
しかしその可能性は低い。
何故なら、『常識』によると『核』に込められた魔力が低いスライムはおろか『核』に込められた魔力が高い他の魔法生物ですらほとんど起きないからだ。つまり俺は、偶然の産物。
『何か』が「踏み込んではいけない」と訴え、俺はそう結論付けた。
『何か』が、「まだ早い。そう……まだ。」
……そう、言った気がした。そして俺は眠りに落ちていった。
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