小さな戦場、小さな俺

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「九十匹は足止め!十匹はついて来い!」 答:とりあえず九十匹ご愁傷様。俺は十匹の方。 頑張ってゴブリンに着いていく。スライム遅いね。悲しいよ。 「止まれ!」 ……ゴツい鎧着込んだ人間の中年男が二十人ぐらい居ます。待ち伏せかよ。 「どどどどうしよう……」 ゴブリン、見事なまでにヘタレだな。 『黙ってろヘタレゴブリン。』 そう伝えて前に出る。 「え……?スライムがしゃべ……いやでもそんな事有り得ないし……」 『ありえるから俺は喋ってんだよ。』 これでよし。今は、目の前の敵に集中する。うるさいヘタレは無視。 「ハハハ!スライムが一丁前に俺らの相手すんのかぁ?」 男の一人が嘲笑う。 普通のスライムなど、自分達には敵わないと知っているから。 そう、スライムの天敵は魔法使いと重装戦士。 しかし、その油断が命取りになる。 地面を全力で蹴る。足無いけど、ゲルを全力で地面にぶつける感じ。 そして、先端を角の様に尖らせる。 だが、男はまだ笑う。 スライムが体当たりしても、自分の鎧は貫けないと知っているから。 しかし、その油断が命取りになる。 (……『貫通』!) 『核』から『魔力』を取り出し、全力で『角』に込める。『魔力』は、いわば特殊なエネルギー。それを使って『角』を硬くする。 普通のスライムにはない俺の『核』の魔力が、ゲルにも鎧を貫ける力を与える。 そして、俺の『角』が男の鎧を貫き、男の胸を貫く。 笑ったまま、男は事切れた。 他の男達も、笑いを止めた。 動揺しているのだろう。有り得ない事が起きたのだから。 すぐさま『貫通』を解き、鎧を貫通し、男を貫ぬくのに使わなかった『魔力』を『核』に戻す。 そして地面に降り立ち、右側の男に狙いを定め、 蹴りだす。 (もう一回『貫通』!) 狙い通りに『角』は男の胸を貫いた。 周りを見ると、男達はようやく現状を把握したようだ。そして、周りの仲間と見合うと、一目散に逃げて行った。 彼らは人間。命は惜しいのだろう。スライムにやられただなんて格好悪いし。 ゴブリンの方を向くと、ゴブリンは小躍りしていた。 「お母様、お父様、この不肖ブンゾウはまたも生き残れました!」 とか何とか。ブンゾウって名前だったんだ。 『早くしねえと後ろから来るぞ。いいのか?』 「はっ!そうだった!早く報告に行くぞ!」 ……頼りないな。まあ、行こう。
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