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上田がベンチへ戻ると、埜々香が冷ややかな視線で見てきた。
上田「本当にすまない。レベルの差がありすぎた。どんな事情があるのか分からんけど、力になってあげられなくて、申し訳ない」
上田は埜々香に向かって軽く頭を下げる。
埜々香「ハァ。いいよもう。最初から期待してないし」
本当は怒るつもりだったが、先に謝られたので、責める気もなくなり溜め息を吐く。
次郎の投球練習が終わり、アレックスが右打席に入る。
尾崎(行くぜ!アメリカ打線!)
次郎はセットポジションから、力を込めてストレートを放つ。
"バンッ"とキャッチャーミットが鳴り、球は内角いっぱいに決まった。
埜々香「これ以上居てもしょうがないし、あたし行くわ」
負けが決まったなら観てても意味がないため、船内へ戻ろうと、埜々香はベンチから立ち上がる。
そして戻りかけたとき、
上田「待て。まだ希望はあるかもしれん」
上田は、マウンドの次郎を見ながら、そう言って埜々香を呼び止めた。
埜々香「は?」
訳も分からず埜々香は振り返る。
三塁側ベンチは皆一瞬固まっており、グラウンド全体が静寂に包まれていた。
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