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 晴れ渡る青空。賑やかな城下街。栄えるルーン国の中心に、白く壮大な城があった。  平穏に見えるこの世界を、城の空中庭園から深刻な面持ちで眺める王子、レリス。ブラウンの髪と瞳が揺らめいている。  その隣には、父である王、レイスがいた。レイスは、レリスと兄弟にみまごう程に若い容姿。色素の薄い淡いグリーンの髪と、息子と同じブラウンの瞳。その端整な顔は、息子にも受け継がれている。  レイスもまた、レリスと同じように眉を顰めて空を見つめていた。 「北の大地に、大きな地割れと時空の歪みが突如現れたらしいです」 「……そうか。度々起こる地震に、強大な魔の力の波動を感じる。これは……」 「これは?」  レイスは俯き、言い淀む。口にするのは悍ましい推測を、レリスは催促する。  深く溜め息を一つ吐き、レイスは再び空を仰いだ。 「封印されていた魔王が、ついに目覚めた」 「そ、れは……事実ですか? 父さん」 「いや。だが、今まで感じたことのない、震え上がる程に禍禍しい力……そう推測するしかないだろう」 「そんな……」  レリスは、血の気が引いていくのを感じた。幼き頃から聞いてきた、この世界の歴史、魔族が支配していた世界、それが再び訪れる恐怖。  だが、一つ希望がある。魔王を封印し、世界に平和を齎(もたら)した戦士がいた。それを、レリスは思い出す。しかし――。 「戦士が世界を救った伝説は、遥か昔……」 「そうだな。だが……」  レイスは、城の最頂部、細く高く聳える塔を見上げた。階段も梯子もない、ただ小さな窓だけがあるそれを。 「伝説の戦士は、あそこに眠っている」 「え!?」  眠っているというのはおかしな話しだ。戦士が魔王を封印したのは千年も昔のこと。 「生きているはずが……」 「だが生きている。我等の先祖は戦士を塔の一室に奉った。戦士は封印術の反動で己さえも封印されることになり、昔と変わらぬ姿で眠っているという」 「そんな、ことが……」  有り得ない、と呟いて、レリスも塔を見上げた。上る手段のない、完全に封鎖されたそこに、伝説の戦士が――。
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