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「戦士があそこで眠っているとして、どうすれば良いのですか」  視線をレイスに移したレリスは、そう問う。その目は、何も手立てはないだろう、そう言う目をしていた。  レイスは、くるりとレリスに背を向ける。 「ルカ、アル、いるか」 「はい」 「いますよー」  木々の中に身を隠すようにしていたルカとアルが、姿を現した。  二人とも色素の薄い金の長い髪を襟足で一つに束ね、深く青い瞳をしていた。顔の造りは似ているが、ルカは鋭く切れ長の目、アルはぱっちりとした幼い目、他は共通して細く高い鼻梁に、薄い唇。二人からは、どこか神々しさを感じる。 「御呼びでしょうか」  ルカとアルは、王と王子をいかなる時も守る守護者。二人は王であるレイスの前で跪いた。 「お前達に、大事な任務がある。この世界がかかっていると言って良い任務だ」 「はい。なんなりと」  王レイスの言葉に応じるのは真面目なルカ。ルカの弟であるアルは、キョトンとレイスを見上げていた。  レリスもレイスの真意が分からず、自らの側近達に何があるのかと考えを巡らせなが、レイスを見た。 「レリスには伏せていたが、この者達は、魔族に滅ぼされた天上人の生き残りだ」 「天上人……!」  レリスは驚愕に見開いた目をルカ達に向ける。俄かには信じがたい。レリスは、天上人など、とうの古に滅んだと思っていたからだ。 「ルカもアルも、お前が幼い頃から、姿形が変わらぬだろう?」 「それは、父さんも術で!」 「彼らは術など使っていない。人とは違う時の流れで生きる者……人間ではない」 「ルカと、アルが……」  信じられないとばかりに、レリスはルカ達を見遣った。見た目は人間そのもの。特別色素が薄いとは思うが、やはり人間にしか見えない。レリスは頭を抱えた。 「それが事実なら、何故天上人が我らの側近を? 何故ここに、人間界にいるのです」 「ルカにもアルにも、帰る場所はない。魔族によって破壊し尽くされたからな。彼らは命だけは助かり、滅んだ天上界から人間界に降りてきた。その時、ボロボロだった彼らを保護したのはルーン国の初代王。それ以来、ルカとアルは王、王子、それぞれの側近として生きている」
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