1 謹賀新年

2/18
前へ
/66ページ
次へ
ひんやりした部屋の空気。寒い冬の朝。 その日の目覚めは最悪だった…。 いつもの様に、体に絡み付くディルの手を外して体を起こす。 眠ったままのディルの顔を見て、ホッと息を吐いた。 「酷い夢…」 この世界で暮らすと決めて初めての新年。だけど、初夢がこれとは…頭を抱える。 此処は魔法使いの存在する異世界。有り得ない話ではないのかもしれない…。 だとしても!ディルとルーの顔が入れ代わるだなんて、断じて嫌だ!!! 私は、交通事故になる所を助けて貰って、この不思議な異世界に来た。 分からない事だらけの世界。 でも、ディルと一緒にいたくて。ずっと…ずーっと一緒にいたくて。この世界に残ると決めた。 私、頑張らないといけない。一緒にいられる様に…。 隣で寝るディルのサラサラの髪を撫でると、ディルの腕が私の腰に絡んで来た。私の体に顔を付けて、ギュッと力を入れる。 夢じゃないけど、ディルが猫みたいで可愛い…。 「さて、起きなきゃ…」 もう一撫でして、腰に回る腕に触る。 『…ん?』 ディルの腕が外れない…。 嘘っ!私は、もがいた。 「ディルー!離してぇー!」
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1551人が本棚に入れています
本棚に追加