第四章 鎌鼬の真意

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   浮遊する鎌鼬の前に壁を作るようにして、十一体の妖が洋輔に殺気を向ける。  その殺気が、突風のように押し寄せる。  殺気の後に、それぞれの妖気が膨れ上がるのが見えた時、妖達が飛び出そうと身構えた。  洋輔が、左手の手首を返す。  攻撃を予測させるモーションもなしに、飛び道具のように伸びてくる槍の一撃を、四体の妖がまともにくらい消し飛んだ。  以前の洋輔との闘いで、伸縮する槍の射程距離を考慮して間合いを取っていただけに、完全に油断していた。  その距離、二十メートルはあった。  前回より倍以上の間合いを、不意討ちとは言っても一瞬のうちに槍を伸ばす事で、無かった事にされてしまったのだ。 「折原ぁぁぁぁぁ」  鎌鼬は、その全身を怒りで細かく震わせる。  その怒りは残った七体の妖に伝わり、出鼻を挫かれたものの改めて臨戦態勢をとり、洋輔に攻撃するタイミングを伺う。  鎌鼬の震えが段々と収まると、前足両の鎌を一度強めに合わせた。  それが、合図となった。
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