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学校の正門を出ると、洋輔は家と逆方向に歩き出す。
まだ、夕方とも言い切れない微妙な時間は、制服を着た洋輔を目立たせる。ところが、自転車でそこらを行き交う女子高生のお陰で難を逃れた。
仮に近所のオバチャンに何か言われても、洋輔は気にしたりはしないのだが。
「じいちゃん、まだ生きてるよな」
齢八十の洋輔の祖父。
折原流古武術の創始者にして、最後の継承者である。
ようは、跡継ぎがいないだけ。
生き死にの軽口を洋輔が出来るのも、小柄ながらに屈強な肉体を有する祖父が、簡単に死なない事を誰よりも知っているからだ。
そして、洋輔が祖父の家に到着する。
良く言えば、古式ゆかしい日本家屋。
悪く言えば、おんぼろ平屋のお化け屋敷風。
平屋の住宅の半分程度の別棟が、古武術の道場でこちらは住宅の数十倍は綺麗である。
「この時間は、道場だろうな」
住宅の横を通り抜け、裏庭の道場へと向かう。そして、不用意に扉を開いた。
「ブレードミサイル発射ぁ」
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