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洋輔の狙いがことごとく当たったのは、妖の軍勢が直線的に攻めてきたからであった。
もしも、最初の段階ですべての妖で結界を包囲していたら、今のような状況にはならなかっただろう。
「もう少し、もう少し減らせたら」
「神奈ちゃん、大丈夫。あいつらの足は、完全に止まってるんだ冷静なら何とかなるよ」
立場が逆転し神奈の方が諭される中、洋輔は戦況を見詰める軍師のようだった。
そして攻めあぐねる妖に向かい、次々と砂利を投げ付け歩行型も飛行型も、火花を上げて消し飛んでいる。
今度は、個々を滅する為の攻撃だった。
「凄い……」
それは、神奈が驚愕する程だった。
やがて、妖の姿は宙に浮く鎌鼬と数体の妖だけになっていた。だが、鎌鼬以外の妖も小妖とは呼べぬほど、強力な妖気を放っている。
もう小石の罠も、砂利の礫も効果は無いだろう。
「洋輔さま……」
「分かってる。ここからが、本当の勝負だってね」
雲外鏡が頼りないと言った洋輔は、もうそこにはいなかった。
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