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四本の巨木の結界があると言っても、残っている妖と鎌鼬相手では、無事に済むとは思えず洋輔は槍を取り出した。
そして、篤史に作ってもらった鞘を外して神奈に渡す。
「洋輔さま、御武運を」
鞘を受け取った神奈は、恭しく頭を下げながら言った。
これまでの洋輔が行った戦略は見事だったが、目の前の妖達は頭脳でどうにかなる相手では無かった。
その背中に期待感はあるものの、妖の妖気に不安感が募るのも神奈の正直な気持ちである。
背中越しに、洋輔もそれを感じていた。
「やるしかない。やるしかないんだ……」
洋輔は、そう言って目を閉じた。
いつものように左手に握る槍から、三拍子の鼓動が伝わってくる。今までなら、洋輔の鼓動は多角形の姿をしていたが、今回は綺麗な真円を描いている。
「これが、本当の同調か?」
心の中で呟きながら、真円の中に三角形を納めて、二つの鼓動を同調させていく。
左手の槍が仄かに輝き、力強く柄が伸び槍としての長さを取り戻した。
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