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洋輔にとって、結界の外へ足を踏み出すのに、妖の屍が無い事は何よりの救いだった。
例え悪しき妖であれ、無惨に引き裂かれた屍が無数に散らばっていたなら、死に直面しにくい現代に活きてきた身として、きっと顔を背けたかったに違いない。
まして、自分が作った罠で屍が作られたのなら。
「残ったか残らなかったかの差で、事実は大量の虐殺なんだけどな」
そう言って、結界の外へ足を踏み出す。
それを狙いすましたように、九十九神や小妖が洋輔に向かって襲い掛かったが、瞬間で塵と化していた。
淡く緑色に光を放つ、神奈がくれた衣がそれを成したのだ。
しかも鎌鼬の妖気にあてられても、体調不良にならずに真っ直ぐ立っていられた。
「凄いな、この服……」
神奈の言う通り悪しき妖気を弾く力は強く、神奈のそれは間近で弾き飛ばしたのに対し、洋輔の衣は槍の射程距離くらいで消し飛ばしている。
それが、洋輔に気持ちの余裕を与えた。それは、冷静に敵を分析する事に繋がる。
「鎌鼬と、十一体の妖……」
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