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男は、小さく微笑む。
頭上から降り注ぐ数多の妖に臆することもなく、まるで楽しむが如くたち振る舞うと、三歩後ろから着いてくる女に声をかける。
「神奈、赤鬼の戦斧を」
「かしこまりました」
神奈と呼ばれた女は、懐から装飾の豪華な鏡を取り出し、両手で胸の前に据えると小声で呪文のような言葉を唱えた。
鏡が淡い光を放つ。
すると、鏡面から何かの柄のような物が伸び出し、玄幽齋の横まで届いた。
「頼むぞ、赤鬼」
柄を掴んだ玄幽齋は、力任せにそれを引き抜いた。
それは、たたみ一畳程はありそうな巨大な斧であった。
手のひら程の鏡から、どうしてそのような物が現れるのかなど、妖も玄幽齋も気にも止めず戦闘は始まる。
「ふんっ」
無造作に斧が水平に振られる。
断末魔の叫びも無いまま、押し寄せた大半の妖が消し飛ぶ。
低能な妖には仲間意識など無いかのように、次々と二人に向かって押し寄せ続けてくる。
斧は、それらを次々と薙ぎ払った。
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