第一章 折原流古武術

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         壱    例年では一月の末頃にくる寒波が、何を間違えたか二ヶ月も早くやって来て、関東地方に十一月の初雪をもたらした。  東北地方並みの寒さは、受験生に余計な試練を追加した。  寒風吹きすさぶ中での通学は、短いスカートの女子高生には酷であろう。 【私立 立頭大学付属高校】  県内の有名大学の附属高校にして、県内でも指折りの進学校である。  十一月とは。  受験生にとって追い込みとも、最後の悪足掻きともいえるこの時期に、寒さの中で必死に勉強しているだ。  だが、この学校の生徒は何処か余裕があった。  大学の附属高校の為、エスカレーター式で進学する者も多いが、元々学力の高い生徒が集まっているから、国立大でも楽に合格出来る者も多いのだ。  そんな中でも、ひときわ余裕を見せる者がいる。  校内の図書室。  一番奥の美術関連の書籍の棚と棚の隙間にパイプ椅子が置かれ、そこで静かな寝息を立てる男子生徒がいた。  死んでる?  そう思うほど、静かな寝姿である。
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