揺らめく闇

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明かりを付けていない薄暗い部屋。もう既に日は落ち、深い深い闇が広がる夜。 もう人々が寝静まるような時間だ。淡い月光が照らし、昼間とは違う、幻想的な世界を作り出している。 それは微かに照らして、明かりの無い部屋を真っ暗にしていない。だけど人が辺りを見るには不便だ。 静かなこの部屋の中に甘美な息遣いだけが聞こえてくる。 まだ少しばかり幼さを見せる顔立ちだが左目にはそんな顔立ちには不似合いな黒い眼帯が付けられている翡翠のような綺麗な髪を三つ編みにしている少女。その姿は一糸も纏わぬ産まれた時の姿のままベッドに転がっている。 少女は“死神(タナトス)”如き漆黒の右目と“紅玉(カーバンクル)”如き真紅の左目を持つ男の腕に抱かれ、息を乱して喘いでいるのだ。 「はぁ…はぁ…」 少女は乱れた息を整えながらその男を見る。 その男は満足げに暗闇の中、微笑んで少女の耳元に顔を近付ける。 「アメリア…傷はもう大丈夫かい?」 男は眼帯を付けた少女…アメリアのくびれた腰辺り、白い柔肌を触る。 「は、はい…貴方様のお力を分けて、頂いたお陰で…」 頬を朱に染めて答える。 アメリア・タークス…数日前にレイラの命を狙って来た『紅き闇』の隊員。 ヴァンとの交戦で、普通ならば命を失い兼ねない程の怪我を負った筈。 だけどアメリアの体には傷跡が一つとして残っていない。 まるで傷など負っていなかったみたいにその肌は綺麗だ。
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