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「やぁ…カーラネミ…どうだい?盗み聞きしてた気分は?」
にぃっと口元を歪めて少女をからかうかのような口振りで言うロイド。
少女が部屋の中でロイドとアメリアがしていた事を部屋の前で聞いていたのを気付いていたのだ。
だが、少女はそんなからかいに恥じらうどころかロイドに冷めた侮蔑の瞳を向ける。
そしてその瞳に似合った冷たい言葉を吐く。
「その名で私を呼ばないで欲しいです…ロイド様…」
「ふふふ、そうだったね…“ユエ”…」
嫌みのように強調して名前を言い直す。
それに少女…ユエは眉を潜め、睨み付ける。このロイドという男はそういう男だというのは理解している。
だからユエは彼の事が嫌いなのだ。
ユエの侮蔑の眼差しが更にキツくなる。
するとロイドはその禍々しく見える笑みのままユエに詰め寄る。
「それで…僕に何の用かな?」
一見したら優しく見える笑み。だがこの笑みに騙されてはならないとユエは体に力を入れて警戒する。
彼の本性は闇そのものなのだから…
「ガルス様が…お戻りになりました…」
「そうかい…だけどどうでもいいな…」
詰まらなさそうに言うロイド。
「どうでもいいって…」
ユエはロイドの言動に絶句する。
ガルスは『夢幻』の名を冠し、この『紅き闇』の幹部、“血薔薇の四花(ローズ・ブラッド・フォース)”のリーダー
その人物が帰ってきたのに彼からの報告すらも聞かないでどうでもいいの一言で済ました。
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