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土方は近藤の代わりに書類作業をこなしていた。
近藤の仕事だが、実際はほとんど土方がしている。土方もそれでいいと思っている。面倒なことは全て引き受けるつもりだ。自分ができることは何でも。
近藤さんは、前を進んでくれりゃいい。
俺ができることァ全部してやる。
近藤の道を切り開けるためにいるのだ、自分は。
「副長ォォォォォ!」
叫び声がしたかと思うと戸がバンッと勢いよく開けられた。
「うっせェぞ山崎っ!」
「すみませんすみませんすみませんすみません~!!」
謝りながら山崎がうわーっと叫び土方に駆け寄ってくる。
「うわっ、んだテメー!」
「俺じゃ無理だったんですっ、止められなかったんです!」
「苦しいってんだよバカがっ!痛ぇんだっ、どっからんな力出してやがるっ」
山崎がぎゅうっと抱きついてきて、土方は声を荒げた。が、山崎はぶんぶんと首を振って力をこめていく。
「手ェ放せコラ!」
「だって副長ぶん殴ってくるからっ!」
「アホかっ!テメーはっ・・・っ!!」
ひやりと空気が鋭く刺さるように感じて、土方は息を呑んだ。
「何してんの?」
ガタガタガタガタと山崎が震え出す。戸のところには銀時が立っていた。顔は笑っているが目は凍りつきそうなほど冷たい。
「多串くんから離れろや、コラ。死ぬぞ?」
「副長!!逃げてくださいっ!」
青ざめた山崎の手はしっかりと土方の着物を掴んでいた。
「いや、逃げらんねェから、お前が必死すぎて俺を逃がしてくんねェから」
「そんなっ、俺、俺、副長のためなら死ぬのも厭わないって思ってるのにっ」
「そう思うなら手ぇ放しやがれっ」
ガツン!と土方は拳で山崎の頭を思いっきり殴る。
「わっ!!痛いっ」
「痛いじゃねェ!」
視界が陰った。バッと土方が振り返るとそこにはいつの間に距離を詰めたのか、銀時がにっこりと笑っていた。
「はーい、そこまでね。あんまイチャこかれるとムカつくからよ?」
「っ!!」
ヤバイ、と土方は咄嗟に身をかわす。
「あ、逃げられた」
やけにおちついた銀時の声に、土方は冷や汗を流した。
「土方さんっ!!」
呼ばれた土方はハッと顔を上げ、戸のところでこっちだと手招きする山崎を認める。
判断は早かった。土方は動き出す山崎と共に走り出した。
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