05 逃がさねェ

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「トシ、すまねぇな」 「何言ってんだ、近藤さん」 土方は口の端をあげ、緩やかに笑みを作る。 「アンタの仕事は俺の仕事だ。だからそんなこと言わなくていいんだよ」 「トシ・・・」 うるうると近藤の瞳に涙がたまっていく。『あ、くるな』と思った土方の足が下がったが、無駄だった。 「うォォォ!トシッ!」 「わっ!」 近藤が土方に飛びつき、がっちりと土方を抱き締めている。 「トシ、トシ!お前は何ていい奴なんだァァ!」 「・・・そんなこと言うのアンタくらいだよ」 この人ぁ本当に人がいい。 こんなに人がいいと誰かにつけこまれるかもしんねぇ。 あー、心配だ。 「何を言う!そんなことはないぞ!隊士たちもお前のことが好きに決まってる!絶対そうだ!」 土方はガクガクと近藤に肩を揺らされるままにされていた。揺れの激しさに頭がぐらぐらする。 「こ、近藤さん、ちょっとこれ気分悪いんだけど」 「トシ!俺はお前を信頼してるからな!お前が大好きだからな!」 揺れが止まったと思うとまっすぐに見つめられ、そんなことを言われた。 土方の目が大きく見開かれ、やがて眉根を寄せ目を伏せる。 「・・・ああ、俺もだよ、近藤さん」 「トシーっ!!」 ガバッとまた抱きつかれるが、土方はなすがままになっていた。そうして近藤の腕の中で目を瞑る。 近藤さん、俺ぁ、アンタが心配なんだよ。 アンタがいい人すぎて、まっすぐすぎて、心配なんだ。 「近藤さん、がんばってこいよ」 ──────心配だ、自分が。 こんなにもアンタのことを心配してしまう自分が。 「うんうん、ありがとうな、トシ」 アンタに何かあったら、俺は何をするかわからない。 「近藤さん・・・」 近藤の腕の中は温かかった。 この人の心みたいだ。 ただ、いるだけで温かい。 あの男とは全然違うな、アンタは。    
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