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……っ。
ばっちり目があった。
「なに?あたしに言った?」
不思議そうに俺の顔を見ている。
「一応、そうだけど」
「…一応ね」
ふわっと、一瞬だけ沙夜が笑った。…ような気がした。見間違いかもな。
すぐに沙夜は無表情に戻った。
「変な奴」
「なに?」
小さな声でつぶやいたつもりが沙夜にも聞こえたらしい。
素っ気なく言われた。
「耳良いのな」
それだけ言って、俺は沙夜たちに背を向ける。
「おーい。将弥、どこ行くんだよっ」
そう言いながら廉がついて来た。
振り返ることもせずに俺は答える。
「どこって、屋上」
「授業は?」
「サボり」
昼休みがもうすぐ終わる。午前中からいない上にこの後の授業もサボるつもりだ。
「仕方ねー。俺も付き合うわ」
「別に頼んでないけど」
「全く、将弥は悪だよなー」
そう言ってる廉の声はなんだか楽しそうだった。
そんなこと、ちっとも思ってないような口調。
俺と廉は2人並んで屋上へと歩いて行った。
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