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教室に残された俺と沙夜。
無言のまま時間が過ぎていき、居心地が悪い。
沙夜は何もなかったかのように、さっきと変わらず本を読むことに集中している。
俺は、というと。
意味の分かんねー問題を睨みつけたままだった。
「…手、止まってるけど」
数分の間じっとしていた俺に、沙夜が言ってきた。
「これ、分かんねーんだよ」
シャーペンで問題を示して沙夜に見せる。
沙夜は本を閉じて、数秒その問題を読んだあとに説明を始めた。
「ここは、この式を使って―…」
「おー。なるほど」
言われた通りに解いていくと悩んでいたことが嘘のように、すぐ答えが出た。
そんな俺の様子を見ていたのか、沙夜は再び読書に戻る。
「さんきゅー」
「ん」
それからまた、沈黙。
沙夜の本をめくる音と、俺のシャーペンの音だけが教室に響く。
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