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「さーやーちゃんっ!」
笑顔のまま、竹村が沙夜の隣に座った。
そして廉が机に置いた袋の中から、紙パックのココアとストローを取り出して沙夜に渡す。
「ココア、好きでしょ?」
「うん」
沙夜は受け取ったココアにストローをさして口にした。
その様子を、にこにこしながら竹村は見ている。
ココア好きなのか。
とか、思いながら俺は2人のことを眺めてた。
「はいよ。で、勉強は進んだ?」
「まぁな」
廉も、俺にコーラを渡してくる。俺はそれを受け取りながら返事した。
「ね、だったら今日はもう勉強はおしまいでよくないっ?」
竹村の提案に俺と廉、沙夜もうなずいてノートや教科書を片付ける。
「…」
俺の目の前にノートが置かれた。
顔をあげると、沙夜が俺のことを見ている。
「なに?」
「それ、使って勉強すれば?」
差し出されたのは沙夜の使っているノートらしい。
手に取って、中をパラパラと簡単に見てみる。
「まじ?さんきゅー」
「家ではやらなそうだけど」
「うっせ」
見ていたノートで軽く沙夜の頭をたたく。
…
一瞬、沙夜が笑ったような気がした。前にも見たことがある奴。
こういうやりとりを楽しんでいるような、そんな笑み。
でもそれもまた、前のようにすぐに笑みは消え、いつもの表情に戻った。
日が暮れてきて、窓越しには綺麗な夕焼けが見える。
それを背景に、俺は沙夜の横顔をぼーっと眺めていた。
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