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長く細い指に少し高いソプラノの声。
さらっとした長い髪がぴったりだ、と思った。
「…聞いてた?」
顔をのぞき込まれる。
急でびっくりして、すぐに沙夜から離れた。
「お、おう」
「ふ~ん」
再び実験を始めた、廉と竹村を眺める。
「頭いいよな、お前」
沙夜と目があったからぼそっと言ってみた。
「んー、まあ」
「少しは否定するとかねーの」
「ないかなー」
考えることもせずにすぐに答えられる。
相変わらず表情は変わらず、興味なさそうだ。
最初の頃は返事すら沙夜はしなかった。それに比べたら慣れてきたよな。
初めて沙夜を見たときと今を比べてみると、なんか笑えてくる。
「何で笑ってんのっ」
少しだけ、怒ったような顔をしている沙夜。
「別にー」
俺は笑ったまま沙夜のことを見つめていた。
俺が沙夜に惹かれていたこと。
そんなこと、まだ俺は気づいていなかった。
ただ、“面白い奴”。
そういう認識だった。
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