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不安そうな顔をしていた沙夜は俺の言葉を聞いて少しだけ笑った。
「沙夜ね、自分でお弁当作ってるんだよ!」
「へえ」
手についたのを舐めて取る。
沙夜の手作り…。
俺は黙って、唐揚げにも手を伸ばそうとした。
「…だめっ」
沙夜が俺の手をつかむ。
白く、小さな手はか弱かった。
「いーじゃねーか」
「だめって言ったらだめなのー」
念を押すように沙夜が言う。
その言い方が、いつもは見せないような感じで可愛かった。
俺がぼーっと沙夜を見ていると、沙夜は手を離した。
それから自分で、唐揚げを食べていた。
「沙夜ってね唐揚げ、作るの苦手なんだよー」
こそっと、竹村が廉に言う。
でもその声は俺にも聞こえているから、沙夜にも聞こえてるはず。
「俺、唐揚げ好きなんだけどな」
わざとらしく、こんなことを言ってみた。
「あんたの好きなものなんて知らないし」
と、当然のように言われてしまった。
沙夜の手作りの唐揚げが食べれず、残念に思う。
しばらく普通に雑談をし、昼飯を食べ終えた。
俺は、さっきのあの男が気になっていた。
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