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帰る気分にはならなくて、玄関には向かわずに屋上へ行った。
普通の生徒は鍵がかかってて入ることはできねーんだけど。
ダイヤル式のその鍵の番号を俺は知っていた。
屋上に出ると、当然だが人は誰もいない。
つい最近、良い場所を俺は見つけていた。
屋上の端の方にある倉庫。
わずかな隙間から、その倉庫の裏側へと行けるのだ。
きっと、誰も知らない場所だろう。
そんなことを思いながら狭い隙間を抜け、畳2枚ほどの広さしかない場所へと出た。
ここだけは世界が変わる。
緑一面の自然な場所。
きっと、誰かが毎日手入れでもしているんじゃないか、って思ってる。
ちょっと前から、クローバーが咲いていることに気がつき、四つ葉でもないかなーと軽い気持ちで探したりしていた。
けれど、全く見つからない。
「…何してんの?」
背後からいきなり、声がして驚く。
それはいつも聞いている声。
「よ」
振り返って、一言だけそう言った。
「お前、何でここにいんの?」
「あたしのお気に入りの場所だから。秘密のね」
そう言うと、俺の隣に腰を下ろした。
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